屋根に作用する風の力=風圧力
テレビの天気予報で、
今週、日本列島を通る低気圧はメイストームを発生させる確率が高いと注意を促していました。
その天気情報を聞いていた妻が、
「台風や暴風が通り過ぎた後、屋根が飛んでしまった被害が報道されるけど、
建築基準法には屋根が飛ばされない構造の定め、規定ってないの?」
と疑問を投げかけてきました。
建築基準法の屋根に関する構造の考え方や風圧力について、
要点を整理して簡潔に、例を用いてご説明します。
建築基準法の構造計算
構造耐力に関しては建築基準法20条に規定し、
具体的な構造計算方法などは建築基準法施工令81条以下で規定しています。
2階建て以下かつ延べ床面積500㎡以下の木造建物は構造計算の必要がありません。
ですので、一般的な戸建て住宅は風圧力も含め構造計算は行ないません。
木造住宅でも3階建て、延べ床面積500㎡を超える場合は構造計算が必要になります。
構造計算書のなかで風圧力に対する屋根・屋上の構造耐力の検証を行います。
風圧力計算式
屋根に作用する風圧力に関しての構造耐力検証は、
建築基準法施行令87条で定めています。
計算式は以下になります。
風圧力=速度圧x風力係数
速度圧=0.6Ex(Voの二乗)
E:建築物の屋根の高さ、周辺地域の状況により決まる係数
Vo:各地域の風速(30~46m/秒の範囲内で告示で示される)
2000年の建築基準法改正以前は、風速を用いない計算方法でした。
風圧力(速度圧)は建物の高さのみが変数となっていたのですが、
現在は風速の2乗に比例する計算式に改められたので、
計算結果で得られる風圧力は実際の風圧力に近い値になったと思います。
建築基準法の構造計算で使う風速Voは...
風速は建設省告示1454号において毎秒30m~46mの範囲内で、
各地の実情を考慮して定められます。
ちなみに、さいたま市は32m/s、
最大の46m/sは沖縄県全域と鹿児島県奄美大島の名瀬市など数か所で使われています。
屋根の風圧力試算
多くの戸建て住宅の場合、屋根に働く風の圧力は、
屋根が浮き上がる方向(屋根を剥がす方向)に働きます。
その力の大きさは、おそらく皆様の想像を超えるものだと思います。
風圧力は、風速、屋根勾配、屋根の高さによって変わります。
建築基準法に定められた方法で計算した、
一般的な戸建て住宅の風圧力例をご紹介します。
・風速30mの場合
屋根平面:約85kg/㎡、
屋根四隅:約110kg/㎡
棟の端部:約178kg/㎡
・風速60mの場合
屋根平面:340kg/㎡、
屋根四隅:450kg/㎡
棟の端部:710kg/㎡
物凄く大きな風圧力(引き剥がし)が屋根に作用していることがわかります
屋根の重ね葺き(カバー工法)の際は屋根下地の確認を!
上で見たように屋根にはとても大きな引き剥がしの力が作用します。
最近の日本は、ゲリラ豪雨や台風並みの強風が吹き荒れることも珍しくありません。
瞬間最大風速60mの暴風もあり得ないことでは無く現実のこととなりつつあります。
屋根下地(野地板、垂木、母屋など)は屋根材が浮き上がらないように固定する役割が主です。
雨漏りによって腐食した屋根下地を交換せずにそのまま使うことは大変危険です。
屋根を重ね葺き(カバー工法)する場合、風圧力による屋根飛散を防ぐため、
屋根下地の状態を調査確認することは必ず行うようご注意ください。