ラジカル塗料ってどんな塗料ですか?
塗装(塗料)を劣化させる原因分子の
「ラジカル」の発生を抑制する塗料です
ラジカルとは
塗装膜などの有機物を劣化させる電子的不安定状態の分子のことです。
塗料の中に含まれる顔料の主成分である酸化チタンは、
水、酸素、紫外線の三要素が揃うとラジカルを生成しはじめます。
ラジカルは、塗料にどんな悪影響を与えますか
通常、物質を構成している分子は、
+とーの電子が対になっている状態で(共有電子対)安定しています。
しかし、熱や光などの強いエネルギーの作用で、
電子の移動や化学結合の解裂などによって
不対電子(+とーの電子が対になっていない状態)ができます。
この電子的に不安定な状態のことをラジカルと言います。
ラジカルは他の安定した分子から電子を奪い取り、
自らは安定化しようとします。
次から次に新たなラジカルが発生、
「ラジカル連鎖反応」が進みます。
ラジカルは、合成樹脂の有機結合(電子結合)を壊しますので、
塗膜は退色やチョーキング(剥げ)が進行していきます。
ラジカル(制御)塗料は何が違うのですか
多くの塗料メーカーはラジカル(制御)塗料製品を発売しています。
が、塗料の内容物やその配合に関する詳細は公表していません。
仕組みとしては、顔料あるいは合成樹脂内に含まれる酸化チタンを、
高耐候性の酸化チタンに変えてラジカルの発生を抑制しています。
無機物であるアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアなどを使い、
酸化チタンの表面処理を行うことで、酸化チタンの耐候性は向上します。
結果として塗料の耐候性を向上させる手法を用いているのだと考えます。
ラジカル塗料の代表例紹介
ラジカル塗料を最初に発売したのは、
日本ペイントで製品名は「パーフェクトトップ」です。
その後、エスケー化研が「プレミアムシリコン」を、
関西ペイントが「アレスダイナミックTOP」
を発売しました。
これら3種類のラジカル塗料の特徴をご紹介します。
日本ペイント「パーフェクトトップ」
2012年、シリコンを超える耐久性を誇る水性塗料として発売されました。
私も発売当初、水性で窯業サイディングに濡れる塗料として、
たくさんの現場でパーフェクトトップを指定して塗装を行ってきました。
今ではフッ素を超える耐久性をもつ「パーフェクトセラミックトップG」
を含め豊富な種類のパーフェクトシリーズが発売されています。
塗装できる材質や下地対応などの種類が豊富なため、
パーフェクトトップを好んで使う建築士、塗装業者さんは多くいらっしゃいます。
余談ですが、北海道岩見沢市で、
水性パーフェクトトップを使って外壁塗装を行った際のことです。
日本ペイントさんから
「水性パーフェクトトップを使用して塗装する北海道初の建物なので、
塗膜の状態を定期的にモニタリングさせてください。」
とのオファーを受けました。
私自身はその後の塗膜状況を確認することは出来ていませんが、
日本ペイントさんがしっかりとモニタリングしデータを取って、
新たな塗料開発に生かしてくれているのだと思っています。
エスケー化研「プレミアムシリコン」
パーフェクトトップに遅れること2年、2014年に発売されました。
本製品発売当時、
年間20~30棟の建物の改修工事の監理を行っていましたので、
パーフェクトトップに替えて本塗料を使ったこともあります。
フッ素塗料並みの15年の耐久性は、
とても魅力のあるラジカル制御塗料です。
プレミアムシリコンカタログの表紙と内容一部
関西ペイント「アレスダイナミックTOP」
2016年発売のフッ素塗料に迫る高耐候性を誇る塗料です。
ダイナミック強化剤を混ぜることで、
高湿度な環境下でも、また湿潤な塗装面に対しても、
塗装できることを強みとしています。
梅雨期などの高湿度環境下でも、
養生していれば、雨が降っていても施工可能な塗料です。
私も梅雨の時期には、この塗料を指定して塗装を行っていました。
アレスダイナミックTOPカタログの内容の一部
ラジカル塗料の価格
ラジカル塗料の価格相場は、
シリコン塗料同等~フッ素樹脂未満が一般的です。
現在の塗装面の劣化状況にあわせ、
使用する下塗材の違いがあるので価格は変動しますが、
1㎡当たりの目安単価は2,000円~3,000円、中央値で2,400円前後です。
耐久性・耐候性は、
シリコン塗料よりも長くフッ素樹脂並みを誇る製品もあります。