塗装・塗膜が劣化する原因は何ですか?
A:紫外線によって塗料の合成樹脂が破壊されるからです
塗膜の劣化は、塗膜表面の樹脂が光沢低下を起こし、
その後に白亜化(顔料が白くなる)が生じて進行していきます。
樹脂の劣化現象は、
1.紫外線(光エネルギー)による樹脂結合の切断
2.水分による加水分解
3.酸素による酸化
などより引き起こされ、中でも紫外線の影響が最も大きいとされています。
紫外線(光エネルギー)による切断とはどういうことですか?
紫外線のエネルギーは410KJです。
この紫外線エネルギーは樹脂の結合を破壊し、樹脂を無力化します。
人間の皮膚が日焼けで火傷するのと同じことです。
樹脂の結合エネルギーはどのくらいですか?
アクリル樹脂やウレタン樹脂などの有機塗料は、
有機結合のC-Cが基本で、その結合エネルギーは356KJです。
紫外線の破壊エネルギー410KJよりも小さいので、
有機結合は紫外線によって容易に破壊されます。
フッ素塗料のフッ素結合はC-Fで485KJ、
無機塗料のシロキサン結合はSi-Oで444kJです。
どちらの樹脂も紫外線エネルギーの410KJよりも大きいので、
それぞれ100%の塗料を作ることができれば、
理論上は半永久的に劣化しない塗料になります。
しかし実際は、それぞれの樹脂の欠点を補うために、
他樹脂と組み合わせて作りますので、耐候性を犠牲にせざるを得ません。
フッ素樹脂は無機よりも結合エネルギーが高い・・・
かつてのフッ素樹脂塗料は3フッ化フッ素を使用していました。
3フッ化フッ素は、有機結合が1ヵ所あり、他の3ヵ所がフッ素結合ですので、
有機結合の1ヵ所が弱点となりフッ素の耐候性が十分に発揮されませんでした。
4フッ化フッ素は全4カ所の結合がフッ素結合になります。
4フッ化フッ素はかつては高温での焼付による塗装方法しかなかったのですが、
技術革新により常温での塗装も可能となりました。
4フッ化フッ素の常温施工が可能となり、
無機塗料を超える耐久性・耐候性の4フッ化フッ素塗料が新たに生み出されています。
最新の4フッ化フッ素塗料のついては、別の機会にお話ししたいと思います。
有機結合の破壊を抑制する添加剤
紫外線により有機結合が破壊されるのを抑制する目的で、
主に下の2種類の添加剤を加え、耐久性・耐候性の向上を図っています。
1.紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収し樹脂の劣化を防ぐ添加剤です。
2.光安定剤
光安定剤はラジカルと反応し無害化する添加剤です。
ラジカル、ラジカル塗料とは?
ラジカルは、
紫外線があたると塗膜内に発生する、合成樹脂を劣化させる因子です。
ラジカル塗料は、
ラジカルの発生を抑制する酸化チタンを混合したり、
光安定剤などを添加した塗料になります。